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鉄の時代

鉄の時代 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11) (単行本)
J.M. クッツェー (著), くぼた のぞみ (翻訳)



一ページ一ページが重い。

鉄の時代とは、ヘシオドスによる区分で、主人公の老女は土の時代がくることを望んでいる。

ラテン語の老教師、白人、老女、そして末期がん患者という絶妙な主人公の立ち位置。

不正と不誠実しかない日常で、老女は娘に届くか分からない手紙を書く。それがこの物語。

この本から受け取ったイメージは、終着だった。

ラテン語教師ゆえ(加えて、おそらく幼少期にいい生活をしたため)、老女は西洋の言葉、知識、考えを引き継いでいる。しかしその言葉は周りに届かない。痛みを慰める効力はガンのクスリに劣る。

老女は人に見放される。南アフリカのアパルトヘイト下でただ一人、暮らしている。
実際には家政婦はいるが、会話は成り立たない。主人公はもう死んでしまったかのように周りから扱われている。
老女が白人だからだろうか。それだけか?
あたかも、風ではためいたカーテンをちら、と見るように。
住みかも侵されてゆく。

老女は体にも見放される。ガンは老女の体を蝕む。

この物語には英雄は誰一人出てこない。ヒーロー役からはほど遠いが男の浮浪者がその位置にいる。
浮浪者は老女を適当にあしらうだけだが、老女は浮浪者を最期の人にすることになる。

西洋の終焉、身体の限界、尊厳の剥奪、が一体となって、確かな痛みをもたらす。

印象に残った箇所
p195 戦争は年長者が若者を犠牲にするもの
p203 男というのは、おのれの存在の一部を、未知なるものに、未来に、行き手にできる影法師のように投影させて生きる、
唯一の生き物なのだ

解説の、p252、恥と恥辱、フィクションのなかの身体
もとても良かった。

当然、容易に消費される作品ではない。けれども、非常に重くてどろどろとしている。
五十歳の男性が書いた作品とは思えない。
若者が書く書評はたかが知れたもの。他の人のも参考に。

・越川芳明のカフェ・ノマド 書評 J.M.クッツェー『鉄の時代』http://blog.goo.ne.jp/nekonekoneko_1952/e/e60e012bd118fe107cdb35f551f16671

・Swiftiana 『鉄の時代』(クッツェー)について http://masaaki-takeda.tea-nifty.com/swiftiana/2008/11/post-56c8.html
気になったこと
ラストのファーカイルは死神なのか?

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テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

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Author:Yuki
東京大学理科一類
物理工学科進学
そのまま院進学
医生系海外院行きたい。
よろしくおねがいします。

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