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精霊たちの家

精霊たちの家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7) (単行本)
イサベル・アジェンデ (著), 木村 榮一 (翻訳)
精霊たちの家

果たしてこれって名作なのか?

どういう話かというと、エステーバン・トゥルエバという男が主人公で、
彼とまわりの人物の人生をつづったもの。

例えば、昔○○おじさんっていう人がいてね、その人はうんたら、と言った日常の会話を、
より濃密に、男女関係、趣味嗜好を重視し、つづったもの。

世代はトゥルエバの一つ上、から孫までまたがる。日月火で読むような作品ではなかった。

人物関係は、語り手が世代交代するごとに更新されるから(例えば、弟が叔父になったり)
把握するのが面倒だった。やっとのことで家系図を作ったから、必要な人は参照してください。

何から語ろう?

まず、トゥルエバなのだが、う~ん、、、女性関係で引っ掻き回したから後々引っかき回されることになった。
かわいそうだとは思わんのだが、ローサやクラーラという素晴らしき美人や若妻がいながら、
順風満帆といかないのは自業自得なのか、それとも女系の血なのか?

作者は綺麗なものの描写がうまい。汚いものは割と、間接的に書いている、と思った。

人物が年をとるわけです。割と急に年をとるし、トゥルエバはとても長生きするからよく分からなくなるし、
途中に一人称が入るからややこしくなるし。
各々の登場人物も移ろうからまたややこしいというか、単純に把握できない。
(例えば、かよわい幼女、みたいなキャラクター化できない。
もっと実際の人間らしい。逞しい奥さんにもなるわけです)
最後まで読むと、記述の疑問が解消されて、最初から読んでみたくもなるが、
三百ページくらいからだれてしまった私は止めておきます。

恋愛シーンや過程では被らないように困らなかったのかなと無用な心配をしたり、
やたらと登場人物がリアルに描かれていたり、
超能力が自然に織り混ざっていたり、
筆力は高い。

ただ、高いから登場人物がとても多くなるし、人間関係も複雑になるから読むにもエネルギーがいる。

最後の革命やクーデターは(私はキューバを思い出したが)作者の実体験が投影されているに違いない。
百年の孤独と比較されるようだが、
この物語は筆者の拠り所(家系的・精神的ルーツ)を描いたものだと思う。
(だから、やっていることはきっと同じ。百年の孤独は読んでいないけれど。大口叩いてすみません)
だから濃密になるのだ。ルーツをしっかりしたものにするために。
(まとめようと思えば、各章でまとめることができる。
それを延々書き下すのは、記述のリアリティがルーツ=神話を確立するから)

(まとめると
1は美女ローサの結婚、死
2はエステーバンによるラス・トレス・マリーアスの開拓
3はクラーラの超能力、クラーラとエステーバンの結婚
4は日常 老人の不思議な能力、人が変わったエステーバン、エステーバンとトランシトとの出会い、エステーバンの親の死、
クラーラの妊娠、フェルラとクラーラの親密な付き合い、フェルラ追放、出産
5はブランカとテルセーロの逢引、大地震
6は エステーバンがサティニィを気に入り、ブランカと結婚させようとする
 老人の死、クラーラが忙しく働いて普通の人になる エステーバンがテルセーロを殺そうとする
7は エステーバンの出世、アマンダ堕胎、ブランカの結婚
8はブランカとサティニィの結婚生活
9はアルバの話 クラーラの死
10は没落の始まり エステーバンとテルセーロ再会、クラーラ、ローサ埋葬
11はミゲルとアルバの話
12は選挙、生活の変化
13はクーデター後
14はエステーバンがトランシトに頼んでアルバを救う
エピローグ エステーバンの死、本書執筆)

私たちは小さいときに昔話をきいた。それは抽象化されたおじいさんやおばあさんが出てくる。
“私の”おじいさんが出てくる話ならば、自伝や、酒を飲みながら語り継がれる武勇伝やヒストリーとなる。
それをきくことで、何かを掴めるか?

何も。取りあえず期待するようなものじゃない。
昔ばなしや説話のような、教訓を残すために、人は生きているんじゃない。
一生懸命か知らないが、生きて、日々を過ごして、反省したり喜んだり悲しんだ。
その魂の軌跡を残すことが、過去の人や記憶を永遠のものにすること。
それを聞くことで、次の世代へと引き継がれるはずだ。

鉄の時代にしても、こういった話は、正統的な文学だと思う。
人々が動き、社会が変わり、情報の流速が加速する今、
何かルーツとなるものを残すこと。

言うなれば、持ち運べるオリジナルな神話が必要だ。
過去の話は、必要な(エッセンシャルな)ものだけ残され、神話のように、
ルーツと、戻ってこられる場所となる。
というわけで、精霊たちの家は、(存在理由を考えると)大事だが傑作ではない。

この話が好きかどうかは人それぞれだが、
まず、自分の日々を噛みしめ、自分のルーツを発見し留めること。
これをしていれば、他の人生を味わうという意味で、この本は役に立つだろう。
(時間にゆとりがある人や、こういった時間のかけ方が有用だと信じている人にだが)
していなければ、他人の世界に逃げることではないか?

クラーラの死後、精霊たちの時代から、現代へと引きずり出される。
現代の私たちのルーツはどこに求めるられるか?
例えば日本人のルーツは、どこにあるか?


別の観点からもう少し。

アルバの代から革命が起こり、社会が変動する。
読んでいると、まるで歴史の教科書あるいは伝記を読んでいるような気分になる。
池澤夏樹の解説はその辺りを上手く解説しているからあまり言わないが、
神話から現実になる(クラーラの死によって)ためにとても読みづらかった。
いつから歴史は神話になるのか、という問の答えではないかと思った。
ああ!もしかしたら古事記に似ているかも知れない。後半で急に国の制圧の話にシフトする。
古事記を読んだ時も違和感を覚えたのだ。神話のままでいいじゃないかと思ったんだった。
北欧神話は神話のままで終わった…気がする。醒めなかったから、北欧神話の方が好きだった。

最後に少し。

男性は一代限り、家系は女性、なのだろうか。…①
女は絶対に自分の子を産める。
一方の男は力と性欲に駆られて生きている。

①に妙に納得させられて、それでも悔しくて何かを言っておきたい。
飢饉になっても男より女のほうが生き延びるときく。
出産のショックでは男性は死んでしまうときく。
女の方が、生命力があるんだろう。
せめて男には、力があると思わせて欲しい。
きっと馬鹿なんだろうけど。
言ったはいいが、やっぱり情けないなあ。

(おまけ
男が話をしたいというと、解決を求める。
女が話をしたいというと、聞いてもらいたがる。)

いいなと思った箇所
p.159 女性の男性観
p.575 私は一種の…
p.583 分割された…
p.584 私は写実的な…
p.585

読んでいてただ面白い。それがいいという人もいるらしい。
まあまあそう思ったが、
私の好みとしては、
何か残る大きなものが欲しい。それを軸にした話が好きだ。
(神曲はそんなことはないんだけれど…。)
複雑になると、やはり好きでないと読めないな。
結局何を得たかって、“ルーツ”を絞り出せたけど、
それだけで終わらせちゃいけない小説だから、まだ頭の中がうわあああってなっています。

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seirei

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Author:Yuki
東京大学理科一類
物理工学科進学
そのまま院進学
医生系海外院行きたい。
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