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苦海浄土 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) 石牟礼 道子

苦海浄土 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) [単行本]
石牟礼 道子 (著)




単なる公害の記録にあらず。

この本を手に取ったのは、世界文学全集の中に、一人だけ日本人作家が入っていたからであった。過去に『精霊たちの家』『鉄の時代』『フライデーあるいは太平洋の冥界』を読んだことがある。何れも、定番の古典ではなかったものの、それぞれに非常に強い個性を持っており、心に訴えるものがあった。

作中では、水銀による苦しみの記述が巧みな方言表現でもって書かれている。筆者が歌作をしているために、文章はさらさらと流れる河のようでいて、きらきらと言葉が光る。日本語だからこその、豊かな表現が存分に発揮されている。

漁村と水俣市と、工場の、三者が描かれている。原告側で筆者も活動をしていたから目線は当然漁村寄りではある。しかし、読んだ印象としては、記述は素直であり、各々が取った行動をそのまま記述することで、その行動の報いをとらせているように感じた。

筆者は関わった全ての人を代弁しながら、古来から日本人が持つ感性でもって、時折顔をのぞかせる。それはあたかも巫女のようである。

作中に判決文を入れるなど、事実を出すノンフィクションのようでありながらも、人に寄りそった記述でもって、極めてリアルな小説という形を取っている。中途半端になることなく、それらが一体となって、こういう記述しかありえないと思ってしまうほどだ。

日本人とは何だったのだろうか。

日本の近代とは何だったのだろうか。

日本の政治とは何だったのだろうか。

水俣病(水俣の病気、というのは、非常に良くない名称である)は、日本の犯した罪であった。日本が変わっていった過程には、過去の文化との裂け目が見える。今ではあまりこのような小説は見られないが、この本は違う。

この本は推さざるを得ない。この本に書かれていることは、過去の、一地方の悲劇ではない。今も起こっており、これからも起こるであろう日本の姿である。決して誇れる姿ではない。

何故なのか?それを学び、変えてゆくための書である。

この本は今まで読んだ日本人作家の小説の中で、最良のものであった。


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テーマ : 書評
ジャンル : 本・雑誌

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物理工学科進学
そのまま院進学
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